将来の映像コンテンツサービスへの活用を目的として国際標準化団体のITUとISO/IECの共同で規格化作業が行われている、次世代映像符号化方式「HEVC（High Efficiency Video Coding）：（ISO/IEC MPEG-H Part2 / ITU-T H.265）」、の最終ドラフトが確定し、投票作業の後、今年の夏頃に正式国際標準規格として発行される見通しです。このたび当社の開発した各種要素技術が「HEVC」を構成する上での重要な技術として採用されましたのでお知らせします。

「HEVC」は、現行の「AVC（Advanced Video Coding）：（ISO/IEC MPEG-4 Part10 / ITU-T H.264）」と比較して、約半分程度の情報量で同等以上の品質の映像コンテンツを再現できる符号化方式です。この圧縮率の高さに、近年のスマートフォンやタブレットPCなどの急速な普及とディスプレイの高精細化に伴って拡大する、モバイル端末へのハイビジョン映像配信や、4K映像や8K映像などのハイビジョンを超える高精細映像コンテンツの放送、配信、伝送などのサービスへの応用に期待がかかっています。

当社は、1988年から映像符号化方式「MPEG（Moving Picture Experts Group）」の標準化にも深く関わっており、「MPEG-1」では双方向フレーム間予測符号化技術、「MPEG-2」ではフィールド予測符号化技術など、「MPEG」の根幹をなす技術の継続的な開発を通して画像圧縮技術の向上に貢献してきました。

このたびの「HEVC」においても、その構成要素に対する重要な映像符号化技術を提案し、各種要素技術が採用されました。これらの技術は、モバイル端末配信やハイビジョンを超える高精細映像コンテンツサービスにおいて、消費電力や回路規模を抑えつつ、高効率な符号化を実現する「HEVC」規格を支える独自技術です。

（1）低負荷高効率な動き情報符号化技術

圧縮効率を向上させるための適応的な動き情報符号化手法の導入により、演算量が大きくなります。動き情報を導出する際に参照するブロックの位置と優先順位を最適化することにより、演算量の少ない高効率な動き情報符号化を実現しました。

（2）直交変換の係数符号化の高速化技術

係数符号化では、圧縮率を高めるため周辺情報を利用しますが、高いビットレートの符号化で処理時間が大きくなります。周辺情報の一括取得技術を導入することで、係数符号化の並列処理を可能とし、処理時間の短縮を容易にしました。

（3）参照メモリアクセス量の抑制技術

高精細画像の符号化では、予測ブロックを小さくすると参照メモリのアクセス量が増大します。フレーム間予測において、メモリアクセス量が大きい双方向予測を単方向予測に変換することにより、ハイビジョンを超える高精細画像（4K、8Kなど）のコーデックの実現を容易にしました。

当社では、今後これらの技術をさらに発展させるとともに、HEVC標準化で培った技術を用いて、業務用および民生用画像装置（カメラ・無線機器など）の高機能化や、よりコンパクトなネットワーク配信に応用展開をはかります。