リリース

NEWS RELEASE

2019年12月24日



 

自閉スペクトラム症の診断補助装置として医療機器の承認に向けた医師主導治験の開始

 



国立大学法人浜松医科大学

国立大学法人大阪大学

国立大学法人鳥取大学

国立大学法人弘前大学

国立大学法人福井大学

株式会社JVCケンウッド


 国立大学法人浜松医科大学(以下「浜松医科大学」)、国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」)、国立大学法人鳥取大学(以下「鳥取大学」)、国立大学法人弘前大学(以下「弘前大学」)、国立大学法人福井大学(以下「福井大学」)および株式会社JVCケンウッド(以下「JVCケンウッド」)は、視線計測装置※1(JVCケンウッド製)について自閉スペクトラム症(以下「ASD(Autism Spectrum Disorderの略)」)の診断補助として医療機器の承認を目指し、浜松医科大学を代表機関とする5機関による多施設共同試験(医師主導治験)を開始しましたので、お知らせいたします。


■概要

 浜松医科大学、大阪大学、鳥取大学、弘前大学、福井大学およびJVCケンウッドは、視線計測装置(JVCケンウッド製)についてASDの診断補助として医療機器の承認を目指し、「視線計測装置及び視線計測装置用診断プログラム※2(GF01)によるASDの診断能に関する多施設共同試験」として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」)に治験届を提出し、治験を開始しました。本治験は、2019年に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」)から「医療機器開発推進研究事業 “小児用医療機器の実用化を目指す医師主導治験・臨床研究等”」の支援を受けています。


■背景

 発達障害の一つであるASDの有病率は、2~3%と言われています。発症時期は通常3歳以前であり、その症状や行動、特徴に起因する日常生活・社会生活の機能障害が長期に渡るため、成人期においても生活に困難が生じやすく、薬物治療・生物学的治療は未開発です。しかし、発達支援※3を始めとして、個々の行動特性に即した対応(通常、合理的配慮※4と呼ばれる)によって予後に改善が認められることが報告されています。したがって、ASD児・者の予後を考える上で、診断は極めて重要な位置を占めますが、ASDの診断に納得できず医療機関を転々とする養育者は多く、その子どもたちへの介入時期は遅れがちです。

 ASDを診断するのは一般的に、小児科医や小児精神科医などであり、子どものコミュニケーションの取り方などの行動学的所見※5を詳細に観察・評価して診断します。通常、観察された行動学的所見の評価は、米国精神医学会精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)にまとめられた診断基準に基づき行いますが、診断基準に当てはまるかどうかの評価は、医師の臨床経験や観察眼に沿った判断に委ねられます。したがって、医師がASDの診断を一度の面接で確信をもって行うことは容易でない上、その時々の子どもの機嫌や診察の環境に左右されることもあります。現在のところ、医師の診断面接に代わる方法はなく、結果的に医師も養育者もASDという診断について、納得を得ることが難しい状況です。

 本装置の医療機器化により、医師の診断に客観的で安定した評価が加わり、医師、養育者ともにASDの診断に納得を得られやすくなる期待が持たれます。その結果、ASD児への介入時期が早まり、ASD児の予後の改善も期待されます。



■治験の概要

治験の名称 視線計測装置及び視線計測装置用診断プログラム(GF01)によるASDの診断能に関する多施設共同試験
治験の目的 ASDが疑われる被験者及びTD(定型発達)※6の被験者に対して視線計測装置及び視線計測装置用診断プログラム (GF01)による診断を行い、ASD診断面接の診断結果と比較し、有効性(診断能)ならびに安全性の検討を行う
治験の対象 治験医療機関を受診した、5歳以上17歳以下のASDが疑われる児・者ならびに5歳以上17歳以下の定型発達(TD)児・者
責任研究者 浜松医科大学子どものこころの発達研究センター 特任教授 土屋 賢治

治験実施機関

治験実施機関 氏名 役職  
浜松医科大学 土屋 賢治 特任教授 研究開発代表者
大阪大学 谷池 雅子 教授 研究開発分担者
鳥取大学 前垣 義弘 教授 研究開発分担者
弘前大学 斉藤 まなぶ 准教授 研究開発分担者
福井大学 小坂 浩隆 教授 研究開発分担者

■これまでの開発経緯

 大阪大学、国立大学法人佐賀大学、鳥取大学、国立大学法人千葉大学、浜松医科大学、弘前大学、福井大学およびJVCケンウッドは、2015年度から2018年度まで、AMEDから「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業 “ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト”」の支援を受け、「注視点検出技術を活用した発達障害診断システムの開発」を行ってきました。その成果を基にこのたび、浜松医科大学、大阪大学、鳥取大学、弘前大学、福井大学およびJVCケンウッドは、視線計測装置(JVCケンウッド製)についてASDの診断補助として医療機器の承認を目指し、PMDAに治験届を提出し、治験を開始しました。


■今後の予定

 本治験機器は、2021年度中に医療機器の承認を目指します。


■用語解説

※1 視線計測装置 モニター画面に提示した映像に対する被験者の視線を計測し、計測結果を表示する装置
※2 視線計測装置用
   診断プログラム
特定の疾患の診断に有効な映像を提示し、被験者の視線を解析、診断結果を表示するプログラム
※3 発達支援 心理機能の発達を支援し、円滑な社会生活を促進するために行う医療的・福祉的・教育的援助(発達障害者支援法、第二条4項より抜粋)
※4 合理的配慮 障害者への支援のうち、社会的障壁の除去(環境の調整)を意図したもので、障害者差別解消法において社会の義務として規定されている(桑原斉ほか:そだちの科学30,66-71,2019より抜粋)
※5 行動学的所見 ヒトの特定の行動が示す属性またはその属性に対する科学的評価
※6 TD(定型発達) 年齢・性別ごとの標準的な発達(通常,神経機能の発達や心理機能の発達をさす)をたどること

■本件に関するお問い合わせ先

<報道関係のお問合せ>

国立大学法人浜松医科大学
  子どものこころの発達研究センター
  特任教授 土屋 賢治
  Tel:053-435-2087/Fax:053-435-2291
  E-mail: kodomo@hama-med.ac.jp

株式会社JVCケンウッド
  企業コミュニケーション部 広報・IRグループ
  Tel:045-444-5232/Fax:045-444-5239
  E-mail: prir@jvckenwood.com

<医師主導治験への参加を希望される方のためのお問い合わせ先>

  Tel:03-6625-4062(年末年始および祝日以外の月・木・金・土曜日10:00~18:00)