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NEWS RELEASE

2020年1月10日



 

自閉スペクトラム症診断補助装置「Gazefinder」の医療機器認定を目指してオーストラリアで治験を開始

 



 株式会社JVCケンウッドとオーストラリアのLa Trobe University※1(以下、「La Trobe大学」)およびTelethon Kids Institute※2は、2~4歳児を対象とした自閉スペクトラム症(以下、「ASD(Autism Spectrum Disorder)」診断補助装置「Gazefinder(ゲイズファインダー)」のオーストラリア医療製品管理局(TGA※3)による医療機器認証取得を目指し、治験を開始しましたので、お知らせいたします。


※1:ビクトリア州 メルボルンを拠点とする大学

※2:西オーストラリア州 パースを拠点とする医学研究機関

※3:Australian Therapeutic Goods Administration


■治験の背景

 発達障がいの一つであるASDの世界における有病率は、1~2%と言われています。発症時期は通常3歳以前であり、その症状や行動特徴に起因する日常生活機能・社会生活機能の障害が長期に渡るため、成人期においても生活に困難が生じやすく、薬物治療・生物学的治療法は未開発です。しかし、さまざまな行動学的介入を始めとする個々の行動特性に即した対応によって、予後に改善が認められることが報告されています。したがって、ASD児の予後を考える上で、できる限り早期の診断が極めて重要になります。

 現在ASDの診断は、行動学的所見を詳細に観察・評価して行う臨床的な判断に依存しています。通常、観察された行動学的所見の評価は、米国精神医学会精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)にまとめられた診断基準に基づき行いますが、診断基準にあてはまるかどうかの評価は、医師の臨床経験や観察眼による判断に委ねられます。この診断の難しさは、診断の不確実性とともに養育者の納得の遅れの原因となり、子どもたちに対する適切な介入の遅れにつながると指摘されています。

 

 当社は、ASDの早期診断を目指して、2011年に国立大学法人浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター 土屋賢治特任教授、国立大学法人大阪大学大学院連合小児発達学研究科 片山泰一教授らと視線計測装置「Gazefinder(ゲイズファインダー)」を用いたASD診断応用に関する共同開発を開始。2015年には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業 “ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト”」の支援を受け、「注視点検出技術を活用した発達障がい診断システムの開発」を行っています。

 このたび治験を開始するオーストラリアは多民族国家であり、さまざまな文化や言語的背景を持つ国民への医療サービス対応や遠隔地域への医療サービス提供の課題に加え、ASDを含む発達障がいの診断においては、州ごとに診断基準が異なるという課題が指摘されています。このような背景から、当社は日本での研究成果を基に、オーストラリア貿易投資促進庁(在日オーストラリア大使館 商務部)を通じて、La Trobe大学およびTelethon Kids Instituteとの共同研究を開始、ASD診断補助装置の医療機器化を目指して、オーストラリアで治験を開始するに至りました。

視線計測装置「Gazefinder」


■治験の内容

 本治験は、当社が製造・販売している視線計測装置「Gazefinder」をベースとしたASD診断プログラムを用いて、2~4歳のASDが疑われる被験者および定型発達(Typical Development: TD)の被験者に対して診断を実施し、従来の医師による診断結果と比較して、有効性(診断能)と安全性の検討を行うものです。

 本治験で使用するASD診断プログラムは、視線計測がベースであるため言語の介在が不要であるだけでなく、約2分間という短時間かつ特別なスキルが無くても施行可能であるなど多くの利点を有しています。

 本装置の医療機器認定により、オーストラリア国内に幅広くASD診断の機会を提供するとともに、客観的な評価により養育者の納得性を高め、早期介入の促進や予後改善を図ることが期待できます。

「Gazefinder」を用いた視線計測の様子



【治験名】

Could “Gazefinder” Eye-Tracking Technology Support the Earlier Identification and Diagnosis of Autism in Young Children?

【治験の目的】 ASDの被験者およびTDの被験者に対して視線計測装置「Gazefinder」および視線計測装置用診断プログラムによる診断を行い、ASD診断面接の診断結果と比較し、有効性(診断能)ならびに安全性の検討を行う
【治験の対象】 2歳0か月から4歳11か月までのASD児ならびにTD児

【治験実施期間】

2021年3月まで(予定)

【責任研究者】

Kristelle Hudry PhD.

Senior Lecturer in Developmental Psychology, La Trobe University

【治験実施機関】 La Trobe University

Kristelle Hudry PhD.,

Senior Lecturer in Developmental Psychology

Telethon Kids Institute

Professor Andrew Whitehouse

Head, Autism Research Team


■La Trobe大学 Kristelle Hudry氏のコメント

 この技術は、診断プロセスを合理化し、臨床医の診断に確実性を加え、子どものASDの早期診断につなげられる将来性のあるものです。オーストラリアには、保健師が使用する行動観察ツールなどの素晴らしいプログラムがいくつかありますが、私たちの研究ではそれらの診断をサポートする追加ツールとしての「Gazefinder」の有効性を検証していきます。


■Telethon Kids Institute Andrew Whitehouse氏のコメント

 オーストラリアでのASD診断の平均年齢は4歳です。しかし、子どもとその家族の可能性を最大限に高める療育につなげるために、より早く診断することが重要であることが分かってきています。「Gazefinder」がその診断プロセスをスピードアップし、子どもや家族がより早く必要なサポートを受けられる可能性の拡大に大いに期待しています。


<商標について>

・「Gazefinder」は、JVCケンウッドの商標または登録商標です。


La Trobe大学のプレスリリース


本件に関するお問い合わせ先

【報道関係窓口】 株式会社JVCケンウッド 企業コミュニケーション部 広報・IRグループ
TEL: 045-444-5232  〒221-0022 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12番地

本資料の内容は発表時のものです。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。