【JVCKENWOOD NEWS】
前回は「貨幣(金)」についての話をしましたが、今回は故事諺「時は金なり」としても知られている「時」についてお付き合い願います。
類似の表現としては、「一刻千金」という言葉があります。蘇軾の詩『春夜』に「春宵一刻直千金、花に清香有り月に陰有り(春の夜の趣は千金に値するほどすばらしい。花は清らかな香りを放ち、月はおぼろに霞んでいる)」とあるのに基づくそうです。
我々は三次元の世界に住んでいます。加えて、過去・現在・未来へと一方向に流れていく第四の次元の「時間」とともに生活しています。
では、時間とは何でしょうか? 大辞林によると、「哲学」的には、空間とともに世界を成立させる基本形式。普通、出来事や意識の継起する流れとして認識され、過去・現在・未来の不可逆な方向を持ちます。理念・精神・神など超時間的な永遠の存在を認める立場では、生成変化する現象界(事物)の性質とみなされます。また、先天的な直観形式だとする考え(カント)、物質の根本的な存在形式としての客観的実在だとする考え(唯物論)などがあります。一方、「物理学」的には、自然現象の経過を記述するための変数と定義されています。
古典力学で用いられる時間(絶対時間)は、二つの事象の間の時間経過の長さが、座標系(観測者)によらず一定ですが、相対性理論では、時間は空間とともに四次元の世界を形成し、観測者に対して運動する座標系での時間は、ゆっくり経過すると観測されています。
また一般相対性理論によれば、時間経過の長さは、重力の大きさによっても影響されると解説されており、何やら大変奥深いテーマとなっています。
ちなみに時間(時刻)は、英語では “Time” と記載されますが、時間を意味するラテン語の “Tempus” が語源となっているそうです。
さて、一般相対性理論の難しい話はさておき、個人的に感じる時間の経過速度は環境によって大きく異なると思われる方々が多いのではないでしょうか。小学校の6年間、また中学・高校の各3年間等は一年が相当長かった記憶がありますが、社会に出てからの時間経過が早いことには驚かされます。大方の人は年を重ねるにつれて、時間が早く経過すると感じていますが、何故でしょうか?
諸説ありますが、私は次のように考えます。例えば、5才の子供が1年を過ごす場合、人生の20%という相対感となります。また、日々新しい経験をすることが多いことが背景にあります。一方、60才の大人にとっては、1年は人生の1/60つまり2%未満にしかならず、また新たな経験をすることは少ないために「あっという間の1年」に感じるのではないでしょうか。ならば、年を重ねても、新たな未知の領域を経験することにより相対的な時間経過を遅らせることになりますね。多くの偉大な方々が晩年も様々なことに挑戦を続けて居られることにも相通ずるものがあると思います。
私は時を刻む時計が好きです。時計には様々なタイプがあります。手巻きや自動巻きの機械式の時計、精度の高いQuartz式、また最近はApple Watch のようなSmart Watch(多機能電子時計)も増加しています。私は、その中でも最も精度が悪く手間の掛かる機械式の時計が好きですが、時計の歴史についてお話します。
歴史的には紀元前2000年頃にシュメールで六十進法の時間単位が考案されたと記録されています。1日を12時間×2として運用し始めたのは古代エジプト人でオベリスクを日時計として使用しました。同時期に古代中国で水時計が開発されました。また、メソポタミアでも同様の技術が使われていたようです。すなわち、文明の発祥と同時期に時間の観念が確立され、「時計」が何らかの形で使用されていました。
現代時計の基本である脱進機(Escapement)は中国で8世紀頃に開発されました。脱進機に冠歯車(Verge Escapement)が初めて使われたのは14世紀の欧州で、16世紀にゼンマイ式の懐中時計が開発されました。振り子時計の歴史は意外に新しく18世紀に開発されました。
その後Quartz時計が主流となり今に至っています。Quartz時計は、当社の前身企業である日本ビクターが設立された1927年に当時のベル研究所が開発しました。しかし、巨大なロッカー程度の大きさがありました。50年前の1969年、セイコーが世界で初めて量産型Quartz腕時計「アストロン」を発売しました。45万円という高価格で当時の小型車とほぼ同じでした。精度は月差15秒程度の誤差で、機械式腕時計の5分程度とは桁違いの正確さとなりました。
脱進機
写真引用:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』
実用化されている最も精度が高い時計は原子時計ですが、1967年に英国で開発されました。原子時計はセシウム原子の振動数を元にする時計で、その誤差は6000万年に1秒という極めて高い精度であり、以降、国際標準時間「国際原子時」を決めるものとして使われています。原子時計を越える究極の時計は、東京大学香取秀俊教授が2001年に発明した「光格子時計 (Cryogenic Optical Lattice Clock)」です。難しい説明は省きますが精度は300億年に1秒の誤差という気の遠くなるものです。宇宙が出来て138億年ですが、この間の誤差は約0.46秒という計算になります。何に活用できるかという疑問ですが、地殻変動などの正確な測定により火山活動や地震の予知、近いところでは自動運転などのインフラ環境に応用することが研究されているようです。
まさに “Time is Money” です。
光格子時計
出典:東京大学ホームページ
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時間の遅れを表した式