【JVCKENWOOD NEWS】
人類は古代から夜空に畏怖と限りないロマンを感じてきました。美しい星空に魅了されてもその実態は長い期間解明されず、現代においても新事実が発見されればされる程新たな疑問が湧いてくる今日この頃です。
紀元2世紀にプトレマイオスが天動説(地球中心説:Geocentrism)を体系としてまとめて以来、16世紀にコペルニクスが地動説(太陽中心説:Heliocentrism)を提唱するまでの約1400年は、地球は宇宙の中心にあり、すべての天体が地球の周りを公転しているとするという説が本流の考え方として定着していました。もっとも、紀元前5~4世紀には、古代ギリシャの数学者であり哲学者のフィオラオス(Phiolaos)が、宇宙の中心に火があり、地球や太陽を含めてすべての天体がその周りを公転するという説を唱えていました。これは現代の宇宙論にもかなり近い先進的な考えでしたが、あまりにも先進的過ぎて主流とはならなかったようです。ちなみに、現代の宇宙論は「中心はない」という、より哲学的な考え方とともに地球、太陽、銀河すべてが大きな速度で移動していることが確認されています。
さて、壮大な宇宙論はさておき、地上の話に戻ります。現代社会は「モノ=リアル(物質)⇒触れられる(Tangible)」と「コト」で成り立っています。物質はさまざまな分子で成り立ち、分子は様々な原子で構成されています。原子を分解すると、原子核と電子に分かれ、原子核は陽子と中性子により構成されています。我々の体も周りの全ての物質も、陽子と中性子と電子の組み合わせで構成されていますが、宇宙物理学的にはその原子(元素)の生成過程が良く分かっていません。
現代では約138億年前に宇宙が突然生まれ、ビッグバンを経て膨張を続けているという説が有力です。
宇宙誕生直後には質量の最も小さい元素(原子の性格的な総称)として水素(H)と若干のヘリウム(He)が生まれたようです。それらが密集して十分な量に達し核融合が始まり(星=恒星)、その結果水素(H)からヘリウム(He)が生成され、さらにヘリウムが核融合しリチウム(Li)が生まれ、次々と大きな質量の原子が生まれたという連鎖が基本といわれています。いわゆる、スイ(H)、へ(He)、リー(Li)、べ(Be)、、、、という周期表をご覧になった方も多いと思います。
この様に次々と質量の大きな元素が長い年月の間に生まれていくわけです。通常の恒星の核融合プロセスでは鉄(Fe)までは生成されますが、それ以上大きな質量の元素がどのように生成されるのかは、いまだ明確にはなっていないようです。しかし、現実には金やウランなど質量の大きな元素が存在しています。最近の研究では、超新星爆発や中性子星合体などの過程でとてつもない重力の働きにより、通常の核融合では生成されない元素が作られることが分かってきました。
その爆発過程で大きな質量の元素が宇宙空間にまき散らされ、それらが徐々に集合し、新たな星(惑星)の原料になるのです。地球を含む太陽系も40数億年のプロセスで形成された結果、さまざまな物質が溢れる星になりました。
古来、世界各地で「人は死ぬと星になる」との言い伝えがあります。そのロマンティックな思いは尊重するとして、逆に「星が死ぬと人になる(星が死んで人を構成するさまざまな物質をまき散らす)」ことは事実のようです。ちなみに、有名なオリオン座のベテルギウス(左上の赤く明るい星)は、約640光年という宇宙的には極めて近い距離にありますが、昨今天文学者の間では最も興味深い星として注目を浴びています。ベテルギウスは赤色超巨星と呼ばれるとてつもなく大きな恒星で、太陽系に移動させれば地球、火星を通り越し木星の軌道までに至る大きさです。現在急速に暗くなっており(ピーク時の約40%)、赤色超巨星の終焉の特徴である「超新星爆発」が近いのではと、にわかに賑わしくなっています。640光年の距離ですから、超新星爆発したとしても、その兆候は640年間現れませんが、仮にその事態となり640年経過すれば、数か月は満月より明るく、昼間でもはっきり見える程の明るさになるとのことです。平安時代に「新古今和歌集」の選者として有名な歌人藤原定家が「明月記」というエッセイを書いていて、その中に超新星爆発と理解出来る事象が記録されています。それまで見えなかったところに突然星が輝き出した(客星と呼ばれた)との表現で3度の客星について記述されています。これらは陰陽師に調べさせたようで、出現した日付や位置が詳細に記載されており、超新星爆発についての最古の記述と認められています。超新星が出現する頻度は百年に一度程度といわれていますが、天の川銀河内の超新星出現は1604年が最後となっています。従い、ベテルギウスという640光年の至近距離(宇宙スケールで)での超新星爆発となれば、まさに千載一遇の研究機会ということなのでしょう。このベテルギウスの超新星爆発は、天文学的には明日発生するかも知れませんが、天文学者は宇宙スケールで極近い将来(100万年以内)に発生という予測を立てています。
大きくオレンジ色に輝く天体がベテルギウス
コロナ禍の最中で皆様には日々ご苦労されていると思いますが、上述のような浮世離れのロマンを糧に新たなエネルギーを創出の上、コロナとの戦いに勝利できればと願うばかりです。
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引用:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』