【JVCKENWOOD NEWS】
史上最悪の混乱に終わった米国大統領選挙も決着し、いよいよ明日Joe Biden(Joseph Robinette Biden Jr.)が第46代米国大統領に就任します。今回のテーマは空飛ぶホワイトハウスとも呼ばれる米国大統領専用機と日本政府専用機についてです。
通称「エアフォースワン(Air Force 1)」と呼ばれていますが、これは大統領が搭乗している場合のコールサイン(無線の呼出符号)です。副大統領搭乗機のコールサインは「エアフォースツー」です。大統領は空軍機以外に搭乗することも多く、海兵隊機(ホワイトハウスへのアクセスなどで使用)の場合は「マリーンワン」、陸軍機では「アーミーワン」、海軍機では「ネイビーワン」のコールサインを使用します。民間機を使用することは極めて稀ですが、大統領家族が搭乗する場合「エグゼクティブワン・フォックストロット(Executive One Foxtrot)」のコールサインが使用されます。また、到着地の環境により各種機体が使用されますが、長距離また国外の場合の機体は、ボーイング社のB747-200(いわゆるジャンボ機)を改造した専用機(VC-25A)が使用されており、この機体が一般的に「エアフォースワン」と認識されています。常に2機体制で運用され、故障などの場合には即座にバックアップ機に変更されます。
現行のVC-25Aはロナルド・レーガン大統領時代に発注されました。冷戦時代における核戦争による電磁パルスへの対応で納入が遅れ、ジョージ・H・ブッシュ(いわゆるパパブッシュ)大統領時代の1990年から運用されました。一部機器の改修は行われているようですが、既に30年経過し老朽化しており2015年に新機種への転換が決定されました。VC-25A導入コストは機密事項となっていますが、ディフェンス業界情報誌によると6.6億ドルとのことです。
新たな大統領専用機はVC-25Bと呼ばれ、その機体はボーイング社のB747-8です。外観は従来のジャンボ機と似通っていますが、新規設計の機体です。主翼形状やコックピットが B787設計思想と共通であることから、B747-100 ⇒ -200、-300、-400と進化して来たジャンボ機ですが、B747-8(787の8)と命名されています。この機体は貨物機仕様と旅客機仕様があり、貨物機としては日本貨物航空(NCA)、UPS、コリアンエアカーゴなど広く使用されています。旅客機としては、大韓航空、中国国際航空、ルフトハンザドイツ航空が運用中です。
現行米国大統領専用機VC-25A(出典:BOEING社WEB)
新型米国大統領専用機VC-25B(新塗装予定)(出典:BOEING社WEB)
新大統領専用機はオバマ大統領時代に決定されました。トランプ大統領は次期大統領に選出後、44億ドルの契約金額は高額過ぎキャンセルすべきだとツイートし、当時のボーイング社経営陣と何度となく交渉し、最終的に39億ドルで正式契約となりました。ボーイング社はコスト削減のため、経営破綻で出荷できずに保管していたロシアのトランスアエロ航空向け機体2機を改修する方針に変更しました。当初の想定金額より約5億ドルコスト削減できましたが、設計変更コスト(8,800万ドル)や新たな格納庫建設などで最終コストは53億ドルと推定されています。また運用マニュアルは10万ページ以上となり、その製作費は8,400万ドル(1ページ換算約800ドル)で、昨年4月に発注されました。VC-25Bは当初2021年に運用開始予定でしたが、現状2025年1月に延期されました。従い、トランプ大統領が搭乗する機会はなく、バイデン新大統領もやっと任期終盤に活用できるかどうかです。
ところで大統領専用機はなぜ「これほど高額になるのか」ですが、次の装備によるものです。
さて、日本の政府専用機についてです。政府による正式呼称は「日本国政府専用機」、自衛隊による正式名称は「特別輸送機」、英語表記は「Japanese Air Force One/Two」です。コールサインは、Japanese Air Force 001/002ですが、簡易的にJF 001/002 が使われることもあります。コールサインの末尾番号は使用目的(搭乗者)により変更されます。過去、海外での人質救出時には701が使用されました。1994年から運用され始めた政府専用機ですが、四半世紀経過し老朽化したため、2019年に新機体に交換されました。従来はB747-400(当時のジャンボ最新モデル)が使用されていましたが、現在はB777-300ER(Extended Range:長距離型)の新機体で運用されています。新型機2機の調達コストは約1,355億円です。民間用の同機種の価格が約350億円ですので、改装費で約2倍になりました。
新旧ともに2機体制で航空自衛隊により運用されていますが、機体の保守は今回からANAが担当しています。旧機の内1機は貴賓室や通信機などの特殊機器を取り外し、入札で日本の鉄鋼業企業に7億円で売却されました。その後、改装され海外中古機市場にて2,800万ドル(約30億円)で売却されました。もう1機は貨物機として改装され海外に売却されています。
日本の政府専用機の仕様は、VIP仕様を除くと民間航空機とほぼ同じですが、通信装置および敵味方識別装置などが追加されています。機内は前方より、貴賓室、夫人室、秘書官室、会議室、事務室、随行員室などが配置されています。随行記者団などが同乗することもありますが、その場合は民間航空のエコノミークラスの料金を支払います。
旧日本政府専用機 B747-400
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』)
現行日本政府専用機 B777-300ER
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』)
航空機としての各機の比較は次の通りです。
米国 VC-25A(現) | 米国 VC-25B(新) | 日本政府専用機 | |
ベース機体 | B747-200 | B747-8 | B-777-300ER |
全長(m) | 70.66 | 76.25 | 73.86 |
全幅(m) | 59.64 | 68.40 | 64.80 |
総重量(離陸時/着陸時)(t) | 378/286 | 448/312 | 351/251 |
エンジン | GE x 4基 | GE x 4基 | GE x 2基 |
巡航速度(マッハ/時) | 0.840 | 0.855 | 0.840 |
航続距離(Km) | 無制限(空中給油) | 約11,000 | 約14,000 |
他国の政府専用機は次の通りで、本格的な政府専用機を保有しているのは米国以外には日本だけとなっています。
参考文献:ボーイング社 WEB、defenceWeb、Business Insider WEB、フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』
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