【JVCKENWOOD NEWS】
2020年東京オリンピックは、約100年ぶりのパンデミック下、それもオリンピック史上初の無観客開催となりました。加えて、コロナによる感染拡大中という極めて困難な状況下で開催する是非も含め、国論を二分するものとなりました。メディア情報ではさまざまなトラブルや不手際があったようですが、ボランティアを含む関係者の皆さんの献身的なご尽力により無事終了しました。
我々はTVを通じての観戦を余儀なくされましたが、理屈抜きに選手の皆さんの頑張りに単純に感動しました。社説で「オリンピックは中止すべき」との主張をしていた某大新聞も閉会式翌日の朝刊で「五輪開催良かった、56%」との報道でした。海外メディアの多くは、コロナ禍でのオリンピック開催を高く評価していたのではないでしょうか。多くの方々は暫しの虚脱感を感じつつ、24日から始まるパラリンピックを心待ちにされているのでしょう。
過去、本コラムでも宇宙に関連する話題を取り上げて来ました。宇宙の壮大さやその神秘に満ちた姿を見るにつけ、日々の悩みや苦しみもささいなことに思えることがあります。
1961年4月、ソ連(当時)のユーリイ・ガガーリンが初の有人宇宙飛行を行って60年が経過しました。1969年7月、アポロ11号が月面着陸して半世紀以上が経過し、今ではISS(国際宇宙ステーション)に各国の宇宙飛行士が常時6名滞在しています。
また、数多くの惑星探査機が打ち上げられ日本も、はやぶさ1および2により史上初の惑星からのサンプルリターンを成功させました。それにより、約46億年といわれる太陽系の起源についての解明が進むことが期待されています。
さらに、各種宇宙望遠鏡が投入され、現在4,801個の「系外惑星(太陽系外の惑星)」が確認されています。
我々が属する天の川銀河系だけでも約2000億個の恒星があり、その多くは惑星系を持っています。宇宙には実数は不明としても、少なくとも数千億個の銀河が存在し、それぞれ数百億~数千億個の恒星で成り立っていると考えられますので、数千億×数千億=10の22乗という単位も不明な大きな数の恒星が存在していると考えられています。各恒星には数個の惑星を有することが容易に想像できますので、この宇宙には文字通り無数の惑星が存在すると推定されます。
その中には、生命はもちろん、高度に発達した知的生命体もいるのではないかと夢が膨らみます。ただし、創成から138億年の歴史を持つ宇宙であり、現人類文明が今後どれくらい継続するかは分かりませんが、数万年としても宇宙の歴史から見れば一瞬であり、時空を超えて地球外知的生命体と遭遇する機会は極めて希少であると考えざるを得ません。
ハッブル望遠鏡が捉えた銀河系群
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』)
さて、より身近な宇宙旅行に話題を変えましょう。約20年前から民間宇宙旅行を目指しいくつかの企業が設立されました。現在、次の3つの企業、ヴァージン・ギャラクティック、ブルー・オリジン、スペースXによる民間宇宙旅行が実現段階に入りました。その概要は次の通りです。
企業名 | ヴァージン・ギャラクティック (Virgin Galactic) |
ブルー・オリジン (Blue Origin) |
スペースX (SpaceX) |
創業年 | 2004年 | 2000年 | 2002年 |
創設者 | リチャード・ブランソン卿 | ジェフ・ベゾス | イーロン・マスク |
開発状況 |
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開発コスト | 4億ドル | 5億ドル | 3.9億ドル |
旅行内容 |
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旅行価格 | 一人約25万ドル | 一人約30万ドル | 約5,500万ドル(4名) |
従業員 | 700人 | 2,500人 | 7,000人 |
企業価値 | 25億ドル(NYSE上場) | 200億ドル(推定) | 320億ドル(推定) |
【ヴァージン・ギャラクティック】
本年7月11日、ヴァージン・ギャラクティックが創業者のリチャード・ブランソン卿他3名のスペシャリストを乗せ、4回目の有人試験飛行を成功させました。同社は米国連邦航空局(FAA)の旅客搭乗免許を取得しており、来春の商業フライトを計画しています。
ヴァージン・ギャラクティックが提案する宇宙旅行は、米国ニューメキシコ州に開港されたスペースポート・アメリカから出発します。「ホワイトナイト2」と呼ばれる搬送用のジェット機により15kmの上空まで運ばれ、VSS Unityのロケットエンジンにより80~100kmの宇宙空間に到達します。
真ん中がスペースシップ2と命名されたVSS Unity。両サイドの二機が結合したような機体がホワイトナイト2。上空で、スペースシップ2が切り離され、単独で上昇する。
(出典:ヴァージン・ギャラクティックWEB)
上昇時は3.5G の加速度で最大速度はマッハ3.3(時速4,000km)となり、その後約4分間の無重力飛行を体験します。その後、大気圏に再突入しますが、その際は4Gでの減速を体験し、21kmの高度からはグライダー飛行によりスペースポートに帰還します。出発から帰還までは約90分です。実際の飛行の前には、3日間の準備訓練があり、内容はレクチャー、一緒に乗船するパイロットや他の乗客と一緒の実技訓練、専門医の健康診断などのようです。さらに実技訓練では、実物大の疑似宇宙船キャビン、シミュレーターおよび母機を利用したフライト体験などが予定され、これらの事前準備などにより現地で6泊することになります。18歳以上であれば年齢制限についての上限はありません。日本では2014年にクラブツーリズム・スペースツアーズが設立され予約販売を開始しました。現在、20名(内女性3名)が予約済で、平均年齢は64歳とのことです。全世界ではすでに600名が正式に予約し支払いを完了しているそうです。
降下開始時は一時的に尾翼を縦方向に折りたたむスペースシップ2
(出典:ヴァージン・ギャラクティックWEB)
初の有人飛行完了後のリチャード・ブランソン卿他3名
(出典:ヴァージン・ギャラクティックWEB)
【ブルー・オリジン】
Amazon創業者の ジェフ・ベゾス氏が21年前にブルー・オリジンを設立しました。過去、15回の無人飛行実験の後、本年7月20日に初の有人飛行に成功しました。本飛行にはジェフ・ベゾス氏、弟のマーク・ベゾス氏に加えて82歳の女性ウォリー・ファンク氏および18歳のオリヴァー・デーメン氏が搭乗しました。ウォリー・ファンク氏は、かつて宇宙飛行士の訓練を受けたものの女性ということで不採用になった経緯がありましたが、今回のフライトの席を提供され最年長の宇宙体験者となりました。また、初の有料搭乗者となったオリヴァー・デーメン氏は、最も若い宇宙体験者となりました。ブルー・オリジンは今年度末までにさらに2回の商業飛行を予定しています。
打ち上げの様子
(出典:ブルー・オリジン WEB)
左から、オリヴァー・デーメン氏、ジェフ・ベゾス氏、マーク・ベゾス氏、ウォリー・ファンク氏
(出典:ブルー・オリジン WEB)
同社の宇宙船「ニュー・シェパード」は全長約18mの小型船で、機体はロケット部分の「ブースター」と、乗員・乗客が乗る「クルー・モジュール」の2つで構成されています。クルー・モジュールには最大6人が乗れ、実験装置も搭載できます。打ち上げから帰還まで完全な自律飛行で、パイロットは搭乗しません。さらに、商業宇宙飛行を主目的としていることから、宇宙船史上最大(107cm×71cm)の巨大な窓により宇宙船内からの眺めは極めて良いとされています。ニュー・シェパードは打ち上げ後、地球と宇宙の境界とされる高度約100kmを越えたあたりでブースターが切り離され、クルー・モジュールはやや上昇を続けた後、降下を開始し、その間5分間無重力状態を体験することになります。切り離されたブースターはエンジンを逆噴射して発射場へ着陸、クルー・モジュールはパラシュートで砂漠に降下します。なお、ブースターもクルー・モジュールも再使用されます。
【スペースX】
スペースXは電気自動車テスラで有名なイーロン・マスク氏により2002年に設立されました。同社はファルコン9と呼ばれる大型打ち上げロケットと宇宙船クルー・ドラゴンを開発済で、NASAから受託した国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給に従事しています。最近は物資のみならず宇宙飛行士の移送にも成功し、すでに日本人宇宙飛行士もクルー・ドラゴンに搭乗しています。
本年2月同社は、クルー・ドラゴンによる民間人4人のみでの宇宙飛行ミッションを実施すると発表しました。搭乗するのはシフト4・ペイメンツ社創業者で複数の軍用ジェット機の操縦資格を持つジャレッド・アイザックマン氏ら4人で、同氏が全費用を負担。このプロジェクトは「インスピレーション4」と命名され、同氏と提携している「聖ジュード子供病院」改善のための2億ドル資金調達寄付プロジェクトの一環として進められました。
同氏以外の3名の内1人は、同病院の従業員で元骨がんの患者でもあったヘイリー・アルセノー氏(29歳)(シンボル呼称「希望」)で、チーフメディカルオフィサーの役割を担います。もう一人は資金調達プログラムの抽選に参加した クリストファー・センブロスキ氏(「寛大」)で、ミッション・スペシャリストとされています。実際にはセンブロスキ氏の友人が選出されましたが辞退し、その権利をセンブロスキ氏が譲渡されました。最後の一人のシアン・プロクター氏は起業家で「繁栄・LEO※」の象徴と命名され、操縦士の役割を担います。アイザックマン氏は船長を務め「リーダーシップ」がシンボル呼称となっています。
※LEO: Low Earth Orbit
左から、センブロスキ氏、プロクター氏、アイザックマン氏、アルセノー氏
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』)
クルー・ドラゴン
(出典:TESLARATI WEB)
本ミッションは9月18日に米国フロリダ州ケネディ・宇宙センターより地球を周回する低軌道(590km)に打ち上げられ、3日間周回の後に大西洋に着水する予定です。打ち上げの前日にはNetflix(ネットフリックス)により訓練の様子などが特別番組として紹介されます。本ミッションは前述の弾道軌道による宇宙飛行とは異なり、本格的な周回宇宙飛行となりますので、そのコストも2桁以上高くなります。スペースX社はさらにスターシップという再使用可能な巨大ロケットを開発し、さらに月周回や火星への宇宙旅行を提案するという壮大な計画を進めています。
ファルコン9(ロケット部)による打ち上げを待つクルー・ドラゴン
(出典:TESLARATI WEB)
試験飛行用 スターシップ
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』)
スペースXによる宇宙旅行はさておき、ブルー・オリジンやヴァージン・ギャラクティックによる宇宙旅行も近づいて来たとはいえ30万ドル前後ですので、一般人にはとても手が出る価格ではありません。飛行機による海外渡航の黎明期である1930年代のコストは正確には分かりませんが、冒険心の強い大金持ちが現在価値で数千万円をかけて挑んだのではないでしょうか。日本人の海外渡航が自由化されたのは、前回の東京オリンピックが開催された1964年4月で、JTB社が発売したハワイ9日間の旅行代金は36万4千円でした。当時の大卒の初任給は約2万円でしたので、初任給の18倍すなわち年収額程度でしょうか。技術の進化や経済発展の度合いから推測すると、2030~2040年頃には、民間宇宙旅行も今のファーストクラスでの海外旅行程度の価格になると思われ、お孫さんの時代には間違いなく一般的なものになるのでしょう。
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