JVCケンウッドの無線機は、本質安全防爆構造※1を備え、公的機関の認証を受けています。石油精製、石油化学、化学合成プラントなどの工場では、可燃性ガスや可燃性液体の蒸気が空気中に放出される可能性があり、これらが電気火花や高温の物体などの点火源に触れると爆発や火災が起きる可能性が高くなります。防爆電気機器は、爆発性雰囲気の着火源とならないように、様々な手法やアプローチにより爆発を防止する技術的な対策が施されています。
※1 機器内部で発生する火花や熱が、爆発性ガスに引火しないように設計された防爆構造
防爆対応無線機の使用先イメージ
防爆対応の必要性
ATEX(Atmospheres Explosibles)標準※2などの防爆規格を取得するためには、機構的な要求を満足し、且つ、電気的な要求についても、以下、機構的なアプローチでの対応が必要となる場合があります。
※2 欧州連合(EU)が定めた、機器や保護システムの安全要件に関する防爆規格
防爆規格では、電流が絶縁体の表面を伝わって流れるのを防ぐため、導体同士の表面距離(沿面距離)を十分に取る必要があります。これは、ホコリや湿気などによる漏れ電流や放電、トラッキング(炭化による導通)を防ぐためです。しかし、携帯用無線機は小型化のため部品を密集して配置する必要があり、規格通りの沿面距離を確保するのが難しい場合があります。そこで、無線機内部を樹脂で満たして外部と遮断することで、沿面距離が足りなくても漏れ電流による爆発を防げるようにしています。
【全充填構造:樹脂充填前】
【全充填構造:樹脂充填後】
防爆規格適合の無線機開発では、静電気対策(表面抵抗値1GΩ以下)、ATEX標準の明るい青色表現、65℃/1000時間耐光試験後の衝撃耐久性、防爆試験合格と機体強度保持の4要件を同時に満たす材料が必要です。ただし、導電性向上のためカーボン添加を行うと、材料が黒色化して色調要件を満たせず、樹脂強度も低下する課題が発生してしまうため、樹脂材料メーカーの協力のもと何度も試作を繰り返し、上記要求を満足する樹脂材料を開発、当社無線機に採用しています。
ATEX標準を満たした明るい青色表現の樹脂材料
防爆モデルは通常の業務用無線機に求められている堅牢性を担保すべく通常の社内評価に加え、防爆要求に対応するための機械的強度も求められます。
「高温・高湿放置→低温放置→インパクト試験→低温放置→単体落下試験→防水試験」
この一連の流れを1台のセットだけで連続で試験し、全てPASSする必要があります。
試験期間も一カ月以上を有し、実際の認証でFAILしてしまった場合は手戻りによる開発期間の遅延に繋がるため、事前に十分な検討や解析を実施し、手戻りのない開発を行っております。