貢献するSDGs
災害発生時や緊急時において、適切な情報を迅速に発信することは、すべての人びとの安全を確保するための重要な課題です。JVCケンウッドでは、多様な業務用無線システムや多言語に対応した非常・業務用放送設備を展開し、緊急時に限らず、人びとの生活を守るためのインフラ整備に貢献しています。
JVCケンウッドでは、強みである「通信」「音響」技術の知見やノウハウを生かし、業務用無線システムを展開しています。台風や豪雨による土砂災害や地震、洪水などの大規模な自然災害が発生した際、初動対応を的確に実施できるかどうかは被害を最小限に抑えるための重要な要素です。業務用無線システムは、既存のインフラに頼らず独自の通信網を構築することができるため、災害時の通信手段の確保や、正確な情報の迅速な発信が可能となり、被害状況の把握や2次災害の発生抑止に向けた適切な対応をサポートします。
JVCケンウッドの業務用無線システムは、固定用だけでなく、携帯用や車載用など多様なシステムを展開しており、あらゆる状況における適切な無線の活用を実現しています。また、機材の軽量化や、騒音下やマスク越しでも聞き取りやすい性能を有しており、災害時に限らず、常に迅速なコミュニケーションを実現し、必要な情報を適切に伝えるためのインフラとして社会の安全の実現に貢献しています。
業務用無線システム
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JVCケンウッドでは、強みである「音響」技術の知見やノウハウを生かし、防災および減災のための製品・サービスとして、非常・業務用放送設備や避難誘導支援システムを展開しています。大規模オフィスビルやショッピングモール、工場はもちろん、地区防災を支える要の放送システムとして、多言語放送対応の非常・業務用放送設備の導入を推進することで、日本に滞在する外国人も含む人びとの安心・安全な生活に寄与しています。
最新機種の非常・業務用放送設備「EM-1500シリーズ」や「EM-K150シリーズ」では、音声警報メッセージを日本語と英語により放送することが可能です。また、「多言語対応CF(コンパクトフラッシュ)カード」に交換することで、3~4か国語(日本語、英語のほかに中国語と韓国語)に対応することが可能となり※、より多くの人びとに非常放送を届けることができます。また、避難誘導支援システムは、従来の非常用・業務用放送に加え、対象者に向けた映像・音声・通信によるメッセージの提供を可能にしています。
多言語放送対応の非常・業務用放送設備―ラック型
「EM-1500シリーズ」
多言語放送対応の非常・業務用放送設備―壁掛型
「EM-K150シリーズ」
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近年、国内外におけるテロの脅威や悪質犯罪への対策は、ますます重要性を増しています。人が多く集まる施設や空港などを中心に、警備員の増強や監視カメラの増設が進んでおり、より効率的で効果的な警備システム導入のニーズが高まっています。JVCケンウッドは、膨大な監視カメラ映像のリアルタイムでの解析や、特定の来訪者に対するスピーディな認証により、省人化・省力化を図りながら、より高い精度で街の安心・安全に貢献します。
「顔認証システム」は、事前に顔情報が登録された特定人物の来訪を、リアルタイムに検知し通知することができるシステムです。犯罪者や過去の迷惑行為者の来訪に対する警戒を、従来のように目視に頼ることなく行うことができ、防犯対策の強化に寄与します。また、防犯だけでなく、VIPなどに対する先回りした応対サポートの点でも期待されており、省人化を図りながら精度を向上させたシステムとして今後一層の市場展開を見込んでいます。
「顔認証システム」構成図
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「車両ナンバー認証システム」は、カメラ映像から車両ナンバーを認証し、商業施設や事業所における車両の入場チェックを自動化します。同システムで入退場履歴を管理することで、受付や警備の業務省力化を実現します。また、施設内の入退場台数や滞留台数をリアルタイムに把握したり、要注意車両ナンバーを予め登録し、入退場を自動的に報知したりすることで、施設の安心で安全なマネジメントに活用することも可能です。
「車両ナンバー認証システム」構成図
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JVCケンウッドグループは、独自の画像および映像処理技術や光ディスク技術を生かし、ヘルスケア分野における製品の開発を行っています。超早期診断の実現が期待される微粒子(エクソソーム)の計測器や自閉スペクトラム症の早期発見に貢献する視線計測装置の開発などを通じて、一人でも多くの人へ適切な医療サービスが届けられるよう、医療現場を支援しています。ヘルスケア事業は超高齢社会において、人びとの健やかな生活の実現を支える重要な事業であり、今後も現場のニーズに合わせた製品開発と市場投入を進めていきます。
世界的に進む高齢化や医療費負担増への対応として、予防医学を発展させた未病期診断、さらには無病期における細胞・分子レベルの検査による疾患の超早期診断の重要性が高まっています。
「ExoCounter(エクソカウンター)」は光ディスクとナノビーズ※1の技術を融合させ、体液中の抗原特異的なエクソソームを1つずつ検出、計測することを可能にしたエクソソーム計測システムです。2020年3月には、エクソソーム研究者に向けた新エクソソーム計測システム「ExoCounter‟BX-EC3システム”」を発売しています。エクソソームは多くの種類の細胞から分泌される約50~100nmの小胞顆粒であり、血液、唾液、尿などの体液中に存在しています。エクソソームは、タンパク質、mRNA※2、マイクロRNA※3など種々の物質を含むため、それらががんなどさまざまな疾患のバイオマーカーになると近年期待されており、「ExoCounter」は身体的に負担の少ない血液を用いたがんの早期発見等に貢献できる可能性があります。
「ExoCounter」は、JVCケンウッドが2016年から、シスメックス株式会社と共同開発を行っているシステムで、さまざまな研究機関と共に疾患の診断や治療の質向上を目指した研究開発を行っています。慶應義塾大学医学部・東京医科大学などとの共同研究においては、乳がん患者と卵巣がん患者の血清中に、がん特異的なエクソソームが統計的に有意に多いことを初めて明らかにしました(2018年7月19日付プレスリリースを参照)。この研究成果により、エクソソームを指標とした新たながん診断や治療法の開発、がん研究の発展につながることが期待されます。
また、2019年からは、英国オックスフォード大学およびシスメックス株式会社の海外現地法人Sysmex R&D Center Europe GmbHとの、エクソソームを用いた妊娠高血圧腎症の発症予測システムの確立に向けた共同研究も開始しています。胎児の発育不良や早産の原因などとなる妊娠高血圧腎症は、母子双方の生命を脅かす疾患であり、全世界で妊婦の約5%が発症するとされていますが、現在は有効な治療法が確立されていません。本共同研究では、より良い妊婦ケアを実現するために、胎盤が体内に放出するエクソソームによる妊娠高血圧腎症の早期発症予測の研究結果に基づき、エクソソームを用いた妊娠高血圧腎症の発症予測技術の確立を目指しています。
JVCケンウッドは、これらの研究成果を基に、疾患の超早期診断や患者一人一人に適した治療の実現という社会のニーズに応えられる製品を提供すべく開発を進めていきます。
※1 ナノビーズ :大きさがnm(ナノメートル、100万分の1mm)オーダーのビーズであり、本技術で使用するものは直径200nm程度である。ビーズの表面にはエクソソーム上の物質に結合する抗体が固相化されており、これにより目的とするエクソソームを特異的に検出することを可能としている。
※2 mRNA:mRNA(messenger RNA)は、DNA配列情報からタンパク質合成の遺伝情報を写し取って伝えるRNAである。
※3 マイクロRNA:マイクロRNA(miRNA)は20塩基程度の長さの1本鎖RNA分子であり、生命現象の微調整役として多くの遺伝子やタンパク質の発現制御に関わっている。近年、エクソソームに内包されているmiRNAは、血液中の酵素による分解を免れるため安定であり、さまざまな疾患の病態や進行度合いによって量や種類が大きく変化するため、疾患の診断に有用であることから注目を集めている。
「ExoCounter」BX-EC3システム構成
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JVCケンウッドでは、これまでに培ってきた映像・光学技術を生かして開発を行った視線計測装置「Gazefinder」の医療機器化を進めています。Gazefinderは、被験者の視線、すなわちモニター画面のどこを見ているかを正確に計測することができます。視線は、脳の働きと密接に関係しており、これを計測することで、脳の発達や疾患・障がいなどを客観的かつ定量的に評価することが可能となります。
自閉スペクトラム症の早期発見に貢献
活用例として、発達障がいのうち特にコミュニケーションが苦手とされる自閉スペクトラム症の診断補助が期待されます。学童期においては、低学年では学習面や行動面の問題が顕在化しやすいものの、高学年になるにつれてさまざまな問題が錯綜し見えにくくなる可能性があり、早期発見によって早期支援を実現することが重要となります(平成28年2月 文部科学省初等中等教育局報告会資料より)。正しい診断は、教育の場における適切な支援や周囲の方への理解を促すことにつながり、また、早期診断によって乳幼児期から適切な支援が行われた場合、通常の学級への対応力が大幅に上がることがわかっています。そのため、Gazefinderによる診断補助により、一人でも多くの児童が早期治療を受けることは、将来的な社会参画を支援するための端緒となり得ると認識しています。
2020年1月からGazefinderの自閉スペクトラム症の診断補助装置としての医療機器化に向け、オーストラリアのLa Trobe大学およびTelethon Kids Instituteにて治験を開始し200人を超える2~4歳のASDと診断された被験者および定型発達の被験者に対して評価を行いました。現在は本治験を完了し、オーストラリア医療製品管理局への医療機器の承認申請中です。
認知症患者に対する早期診断への応用も
Gazefinderは、簡便かつ正確な認知機能評価装置として、増加傾向にある認知症患者に対する早期診断への応用も期待されています。JVCケンウッドは、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科(以下、大阪大学)の研究グループと、新しい認知機能検査技術を共同開発しました。この検査は短時間で行うことができ、言語の介在をほとんど必要としないため被験者への負担が少ないだけでなく、グローバル展開が可能です。大阪大学医学部附属病院にて被験者80人に試したところ、医師が20分ほどかけて問診する従来の標準的な認知機能検査法と高い相関を得られることが明らかとなりました。この研究成果は大阪大学より論文発表され、英国科学雑誌「Scientific Reports」(オンライン版)で公開されています。Gazefinderの活用で、被験者の心身への影響を最小限に留めながら正確に認知症リスクを見極め、早期の適切な治療とサポート環境に誘導することにより、認知症患者自身や家族の負担軽減に寄与し、認知症や医療費負担という高齢者医療を取り巻く大きな課題を解決する一助となることが期待できます。
Gazefinder NP-200
計測イメージ
※ 導入にあたっては、所轄の消防署の許可を得る必要あり。