当社は、2021年5月14日付で、2021年度を開始年度とする新たな中期経営計画「VISION2023」を策定しました。
「VISION2023」では、激変する事業環境下で中長期的に企業価値を向上していくために、収益基盤の確保と構造改革で安定した事業収益を「稼げる体質」へ変革し、既存事業の収益基盤の強化、事業ポートフォリオの再定義により新たな成長分野を確立し、エクセレント・カンパニーへの飛躍に向けて取り組んでまいります。
昨今、市場環境は想定を上回る速さで変化しており、さらには世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大が、DX(デジタルトランスフォーメーション)による技術革新を加速させ、当社を取り巻く事業環境は大きな転換が進んでいます。
このような環境下で新たに策定した中期経営計画「VISION2023」では、激変する事業環境においても中長期的に企業価値を向上していくために、「たくましさ」と「したたかさ」を併せ持ったエクセレント・カンパニーへの飛躍を目指し、既存事業の収益基盤の強化と事業ポートフォリオの再定義による新たな成長分野を確立していくことを主眼とし、「変革と成長」をテーマとした3年間と位置付けました。
JVCケンウッドでは、当社を取り巻く市場環境を分析した結果、AI、IoTなどの新技術・DXによるビジネスモデルの創造や革新、既存ビジネスの代替や新たな需要喚起、デジタル化の加速とリアルとデジタルの融合などに機会があると考えています。また、ESGの課題を意識した経営、社会課題の解決を求める動きも機会として捉えています。これに対して、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化によるビジネス影響や、半導体のグローバル供給網リスクの深刻化、グローバル地政学リスクの拡大や気候変動によるサプライチェーンの混乱などのリスクがあることも認識しています。
「VISION2023」の策定にあたっては、これらの機会とリスクに関する外部環境の認識のもと、重点テーマとして4点の検討を進めました。
当社は、外部環境認識に基づく重点テーマを検討した結果、「VISION2023」の基本戦略を『変革と成長』としました。
このうち、「変革」については、
①事業ポートフォリオの再定義による「収益基盤の再構築」
②自動化推進、国内生産回帰を軸にした「ものづくり改革の深化」
③「生産拠点の再編・統廃合」による製造コスト力の変革を目指します。
一方で、「成長」では、
①IoTプラットフォームサービス事業への展開による「DXビジネスの進化」
②「With/Afterコロナに向けた新規商材・新規販売チャネルの拡大」
③「資本コストを意識した投下資本効率向上、ROE向上」に挑戦します。
既存事業の収益基盤を強化していく「変革」と新規商材と新規事業の創造によって成長事業を拡大していく「成長」を両輪として、サステナビリティ経営とESGの進化に取り組んでいきます。
「VISION2023」では、構造改革による収益基盤の強化(「変革」)、新規商材・新規販売チャネルの拡大と新規事業の創造による成長事業の拡大(「成長」)、「利益ある成長」と「グローバルでの社会課題解決」を両輪とした取り組み(「サステナビリティ経営/ESGの進化」)を進めています。
中期経営計画「VISION2023」においては、「変革と成長」で掲げた事業戦略を着実に実行することで、最終年度となる2023年度に売上収益3,200億円以上、コア営業利益※1120億円以上、ROE※210%以上を目標としています。また、配当性向30%を目安とした安定的な配当を行いながら、財務の安定性の目安となる親会社所有者帰属持分比率についても2023年度末30%以上を達成することで、成長の維持と安定性の確保の両立を図ります。
一方、「VISION2023」期間の3年間累計で営業キャッシュ・フローを700億円以上稼ぎ出すことで、2023年度末の有利子負債資本倍率(D/Eレシオ)を1.0以下まで低減させます。
「VISION2023」では、キャッシュ・フローの創出に重点を置き、使途を明確化した上で効果的なキャッシュアウトを実行していきます。
キャッシュインに関しては、営業キャッシュ・フローに加え、資本効率の観点から選定した事業や資産などの売却による100億円のキャッシュと合わせ、800億円を想定しています。
これに対して、キャッシュアウトでは、事業の維持に必要な通常投資600億円を除く200億円の枠の中から戦略投資や配当、有利子負債の返済などを実行していきます。中でも戦略投資については、成長事業への投資、技術基盤の開発、構造改革、拠点改革、IT投資などを想定しています。また、事業部門別のキャッシュ・フロー/ROA※3を主たるKPI※4として使用することで、投資の是非の判断や投資実行後の予算・実績管理の精度向上を図ります。
※3:資産合計当期利益率
※4:重要業績評価指標
当社は、2018年より事業体質の強化施策として、「ものづくり改革からの経営改革」を全社横断的に実施し、 2020年からはさらに活動範囲を拡大した経営基盤改革活動を実施してきました。これに加え、2020年度においては新型コロナウイルス感染症拡大による売上下限リスクを想定した緊急対策として、CEM(COVID-19 Emergency Measures)プロジェクトを推進してきました。このプロジェクトでは、徹底したキャッシュアウトの抑制を目的に棚卸資産や設備投資、開発経費を含むすべての固定費の削減などを行ってきましたが、これらの施策によって期初の想定以上の効果を上げることができました。これらの取り組みには、不要不急の施策の中止や後送りもありますが、経営体質の改善に結び付いたものもあります。今後も、この体質改善の定着化や恒久的な事業体質の変革を推進する活動を継続していく考えです。
財務戦略の大きな柱の一つとして、株主への安定的な利益還元を考えています。同時に、今後の成長に向けて経営資源を確保することも経営上の最重要課題であることから、収益力および財務状況を総合的に考慮して剰余金の配当などを決定する方針です。「VISION2023」では、この方針に基づき、配当性向30%を目安とした配当を行う計画です。
一方で、内部留保資金につきましては、今後の経営環境の変化に対応するため、財務体質の強化、継続的な安定配当の実現、将来の事業展開に向けた経営体質の強化および成長領域への投資などに有効的に活用してまいります。
※1:営業利益から、その他の収益、その他の費用、為替差損益など、主に一時的に発生する要因を控除したもの
※2:親会社所有者帰属持分当期利益率