JVCケンウッドグループは、“ものづくり”の原点に回帰するとともに、「人と時空をつないで未来を創造する」という技術開発戦略を推進しています。日本ビクター、ケンウッド時代から培ってきたコア技術である「映像」「音響」「通信」さらには「デザイン」を礎に、次世代を見据えた研究・技術開発を行っています。
2021年には、社会課題の解決、インキュベーション増強、知的財産の創出、技能の高度化を重点テーマとした、未来の日常への貢献と新しい価値を創造し、稼げる研究所として「未来創造研究所」を設立しました。
また、既存事業の拡大および隣接・新規事業領域の拡大を図るため、JVCケンウッドグループでは当社独自のコア技術に加え、さまざまな業界のパートナーと連携しオープンイノベーションを積極的に推進、ユーザーエクスペリエンス/ユーザーインターフェイスに重点をおいた人間中心設計や激変するセキュリティ技術などへの取り組みも含めて、社会課題を解決する先進的なソリューションビジネスにつながる尖った技術を開発しています。
さらに、「デザイン経営」視点を重視し、当社独自のコア技術にデザインの視点を掛け合わせることで新しい価値を生み出し、つながる世界の実現を推進するとともに、未来創造研究所、JVCケンウッド・デザイン、知的財産部が連携・共創して、次世代を先読みした知的財産の創出への取り組みを進め、技術開発戦略と連動した知的財産経営を推進しています。
これらの取り組みにより生まれたイノベーションは、将来の活用を想定した知的財産ポートフォリオとして蓄積され、新たな価値の創出、競争力強化の源泉として、事業や経営に生かされていきます。
2019年にCTOに就任した際、私は「人と時空をつないで未来を創造する」を技術戦略のメッセージとして掲げました。そして、そのメッセージを実現するために、2021年に中期経営計画「VISION2023」とともに技術開発戦略「R&D²」を策定しました。「R&D²」はResearch(研究)、Development(開発)、Design(デザイン)を意味しています。これらは、研究開発した成果をどのようにデザインして世の中に送り出すか、というJVCケンウッドグループの価値創造に欠かせない要素のひとつです。
JVCケンウッドグループは、創業以来家電メーカーとして、人びとに感動と安心を与える商品を「世界初」、「業界No.1」として次々と世に送り出してきました。しかし、最近は目まぐるしく、そして複雑に変化する世の中のニーズと熾烈な市場環境に対応するため、短期的な結果を求める活動が多くなってしまっていたことも事実です。本来、我々の研究開発は、人が持つ本能と欲求に素直に応えるテクノロジーを生み出し、世の中に持続的な価値を提供していくことが使命です。そのため、「R&D²」策定においては、未来にどんなことが起こるのかを想像し、創造につなげるという原点に立ち返ることを意識しました。
「R&D²」の要として、2021年7月に「未来創造研究所」を設立しました。今までも技術開発部門は存在していましたが、未来創造研究所は言葉通り、より未来を見据えた、社会課題解決型の組織を目指しています。未来創造研究所で取り扱うテーマは、すべてSDGsに紐づけられており、どのような形で社会に貢献できるのかが明確に説明できるようになっています。
これから未来創造研究所では、コア技術である映像、音響、通信、デザインを礎にして、我々の既存の事業領域にとらわれず、人と時と空間をつなげる新たな価値を創造するために、今まで以上に多くの仮説検証に取り組んでいきます。すぐにはカタチにならなかったり、失敗することもあるかもしれませんが、それらの積み重ねは我々の財産になっていきます。そして、その財産を有効に活用することも重要なポイントです。私は未来創造研究所を「稼げる研究所」にしたいと考えています。そのためには、蓄積された技術や知的財産の市場価値をどのように高めるかについて積極的に検討する必要があります。当社事業の商品やサービスへ実装することだけにこだわらず、求められるのであれば異なるドメインでの活用を検討し、産学連携や異業種とのパートナーシップを強化するなど、研究所としての外部との連携を活発化させていきます。新たな技術や知的財産の活用方法を複数確保することで、エンジニアには失敗を恐れず創造の翼を広げてもらいたいと考えています。
JVCケンウッドグループが、世の中になくてはならない存在となるために、我々は原点に立ち返り、人の持つ本能と欲求を素直に受け止めた研究開発活動を推進していきます。そして、社会課題を技術で解決していくとともに、常に未来に想いを馳せる組織であり続けるために、事業会社として掲げている目標は達成しながら、製品の企画・開発から生産・品質保証に携わるすべてのエンジニアが自由闊達に議論し、夢中になって「ものづくり」に取り組める環境を作ることが私の最大の責務であると考えています。
取締役 常務執行役員
最高技術責任者(CTO)
園田剛男