2017年

NEWS RELEASE

2017年3月14日


ヘッドホン再生で、リスニングルームのスピーカー音場と定位を再現
頭外定位音場処理技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」を新開発

業界初※1の「耳内音響マイクシステム」を用いた測定と、独自の「個人特性生成アルゴリズム」により個人への最適化を実現

 株式会社JVCケンウッドは、ヘッドホン再生においてリスニングルームのスピーカー音場と定位を再現する頭外定位音場処理技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」を新たに開発しました(関連特許19件出願中)。

 当技術は、従来、頭の中に定位していたヘッドホンの音場(頭内定位)を、個人の耳や顔の形状、使用する再生スピーカー、リスニングルームなどの音響特性を測定し、各ユーザーに最適な信号処理を行うことで、ヘッドホン再生でありながら頭外に定位するだけでなく、スピーカーリスニングの音場と定位を実現しました。

「EXOFIELD」 : EXO(外)+FIELD(フィールド、領域)を組み合わせ、これまでにない音場の再現がもたらす新しい世界への広がりをあらわした造語。

※1: 市販されているヘッドホン頭外定位処理のための測定システムとして、2017年3月14日現在(当社調べ)。

< 開発意図 >

 デジタルオーディオプレーヤーやスマートフォンなどの普及により、音楽をヘッドホンで楽しむことが広く普及していますが、ヘッドホンでの再生は音の繊細な質感やニュアンスの表現に優れているものの、音場に関してはヘッドホンを通して左右の耳から入ってきた音が頭の中で定位するため、スピーカーで聴く時のような広がりのある音場と定位を再現することが課題となっていました。

 そこで今回当社は、これまで培ってきたさまざまな音場再生技術を生かし、ヘッドホンでのリスニングにおいても、“リスニングルームのスピーカーで聴いているような音場と定位”を再現する、独自の頭外定位音場処理技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」を新たに開発しました。当技術は、個人特性を含むさまざまな音響特性の測定に基づく音場処理により、従来の一般的な頭外定位技術が苦手としていた奥行きや距離感の表現、とりわけセンターの音像定位の表現に優れており、ヘッドホンをしていてもスピーカーで聴いているかのような、リアルな音場効果をもたらします。また、耳元から音が鳴っているように感じないため、ヘッドホン再生に圧迫感を感じている方々に自然なリスニングを提供します。さらにマルチチャンネル音源の再生にも対応でき、ホームシアターやVR(バーチャルリアリティ)をはじめとする立体音場のヘッドホン再生も可能です。

 当社は今後、これまでにない音場の再現がもたらす新しいヘッドホンリスニング体験の提供を目指し、当技術を搭載したサービス・商品の開発を推進していきます。

< 主な特長 >

1.個人に関するさまざまな音響特性を測定でき、頭外定位音場のための最適な音場処理が可能

 これまで、ヘッドホンにおける頭外定位技術は標準化された頭部伝達関数を用いて演算処理を行っていたため、耳や顔の形状などの個人の特性までは反映することができず、各ユーザーに最適な効果を発揮することは困難でした。当社技術「EXOFIELD」では、個人の耳や顔の形状だけでなく、使用する再生スピーカーやヘッドホン、さらにリスニングルームを含む全ての音響特性を測定、解析し、個人に最適にカスタマイズされた信号処理を行うことを可能とし、従来の頭外定位音場とは異なり、各ユーザーに応じた最適な音場を実現しました。


<音場定位イメージ>


2.業界初※1の「耳内音響マイクシステム」を用いた測定により、オープン型/密閉型を問わずヘッドホンで自然な音場を実現


<耳内音響マイクシステム>

 個人特性の測定のためにMEMSマイクを使用した超小型の「耳内音響マイクシステム」を新たに開発。超小型のマイクを外耳道の空間に配置することで、頭部や耳の形状だけでなく、外耳道の音場特性までも正確な測定を可能にします。また、マイク装着時に、耳の形状の個人差に関わらずマイクの位置を理想的な測定位置に簡単に固定できるようにすることで、安定した測定と高い測定精度を実現しました。これにより、オープン型ヘッドホンはもちろん、従来の頭外定位で効果が得にくいとされていた密閉型ヘッドホンでも、自然な音場でのリスニングを実現します。


3.新開発の「個人特性生成アルゴリズム」により、最適な音響特性を短時間で測定・自動生成が可能

 新開発の「個人特性生成アルゴリズム」により、各ユーザーに最適な音響特性を短時間で測定と自動生成することが可能です。このアルゴリズムにより、リスニングルームなどの測定環境の影響やヘッドホンの装着ずれによる頭外定位音場効果のばらつきを最小化させることができるため、測定結果から演算した伝達関数に最適化処理を行うことで幅広い測定条件、使用条件に対応します。


<EXOFIELD音場処理概念図>


1)センター音像定位の明確化

 スピーカーの直接波と反射波をそれぞれ解析し、スピーカーとリスナーの位置関係による音の打消しや部屋の反射の影響を補正することで、従来の頭外定位技術で課題となっていたセンター音像の不明確さを改善しました。さらに、頭外定位音場生成時において、ヘッドホンの再生音場をキャンセルするための逆フィルタ生成時に各チャンネルの位相特性を正確に合わせることで、本来あるべきセンター位置への音像定位を実現しました。

2)ヘッドホン装着ずれによる特性ばらつきの最小化

 ヘッドホンの装着位置から生じる周波数特性の変動やピークディップを、ヘッドホンの再生音場をキャンセルする逆フィルタの生成時に最適化。ヘッドホンの装着ずれに起因する定位効果の変動を安定化しました。

3)測定から個人特性の生成までを短時間で実現

 インパルス応答の測定は短時間で計測できるパルス法を採用し、測定から個人特性の生成まで短時間で完了します。また、周囲の環境や部屋の影響により低域の測定が不安定になりやすい環境では、あらかじめ測定した室内音響の特性を個人特性と組み合わせることで、短時間で低域の安定した特性を生成することも可能です。

4.測定データと「EXOFIELD」処理をスマートフォンアプリケーション等への実装が可能

 当技術は、スマートフォンアプリケーション等への実装が可能です。個人特性をインストールすることで、場所を問わずどこでもヘッドホンで頭外定位音場を楽しめます。

5.ハイレゾ音源やマルチチャンネル音源など、幅広いアプリケーションへの対応も可能

 信号処理を全てハイレゾ音源処理することができ、ハイレゾ音源にも対応が可能です。さらに、ステレオ再生だけでなく、マルチチャンネル音源の再生にも対応でき、ホームシアターやVRをはじめとする立体音場のヘッドホン再生も可能にします。従来の立体音場で不十分だった明確な定位感によりこれまでにない体験の提供を実現します。

<商標について>

  • 「EXOFIELD」はJVCケンウッドの商標または、登録商標です。
  • その他、記載されている会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ

【報道関係窓口】
株式会社JVCケンウッド 企業コミュニケーション統括部 広報・IR・SR部
TEL : 045-444-5310 〒221-0022 神奈川県横浜市神奈川区守屋町三丁目12番地